日常細事


kiji

2017.1.24 日本の家具
 家具の定義付けは欧州と英米ではその認識が異なる。独仏では動くものという意味が当てられ、英米では備え付けるという意味を持っ。
 これに対して日本では、今でもお寺の座敷に見られるように家具らしいものは見当たらない。
 我が家などは部屋は家具に占拠されている有様だ。これは現状の日本における家具配置の実情でもある。
 古い日本の民家を見ると畳の部屋にはあまり家具類は置いてない。見られるのは箪笥や鏡台ぐらいだろう。どだい畳の上に重い家具を長く置いておくことは好ましくない。
 古来、部屋に調度品を置くことは「調度多きはいやしきもの」という日本人の美意識があったようだ。
 一説によると、欧米との居間の造りの違いは文化の違いに関連しているそうだ。欧米では床が板敷きであり、椅子・ベッド・テーブルなどの調度品を置き、靴を履いたままで生活するという文化がある。
 これに対し日本は畳の文化で、これは「たたむ」が語源で、畳は古くはむしろ・ござ・こもなどの総称で、座ったり寝たりする場所に一時的に敷かれたもので、普段は畳んでいた。 現在のように敷きつめるように厚くなったのは、書院造が生まれた中世(15世紀) 以降である。この時を境に家具の一部であった畳は家と融合することになる。
 古民家を見れば分かるように、部屋に入る時は履物は脱ぐような構造になっている。畳は座る場所であり、座敷と言う言葉はそこから発しているようだ。その座敷にある収納家具も棚・押入れなどのように家と融合していったという歴史的背景がある。
 こうした伝統的文化を受け継ぐ日本家屋が大きな変遷を迎えるのは、明治以降の西洋文化の流入で、それと融合したのが洋間の導入で、離れとして別棟に西洋館を建て、そこには椅子・テーブル・ベッド・ソファーなどの西洋家具が置かれた。今でも戦災を免れた家にそうした建築物を見ることができる。家具を置くには板敷きのフローリングの方が優れている。
 現代は電化製品が家具として新しく位置を占めている。冷蔵庫・洗濯機・テレビ・オーディオ等々数え切れない。これらの家具は生活様式すら変えてしまう。
 これからの家はこうした家具をいかに上手く収納し、快適な生活空間を生み出すことに重きが置かれることになるだろう。




 

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